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【相談対応Q&A】熱中症予防に対策グッズを持たせたい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第140回のテーマは「登下校時の熱中症予防に対策グッズを持たせたい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第140回のテーマは「登下校時の熱中症予防に対策グッズを持たせたい」。

学校での熱中症対策が必要

 日本の夏は暑い(熱い)です。特に年々暑さが増してきているように感じます。私は7年前まで埼玉県の北部の小学校の教員をしていました。日本での最高気温(41.1℃)が記録された熊谷市の隣の深谷市の学校でした。その当時はまだ教室にエアコンも無く、本当に暑い中で毎日過ごしていたのを思い出します。

 環境省の「熱中症の状況と対策について」という資料によると「日本の夏季の平均気温はこの100年で約1.5℃上昇しており、都市部は約3℃上昇している」とされています。さらに、「熱中症は死に至る可能性のある非常に重篤な病態であるが、個々人が予防法を知って、それを知って、それを実践することで、防ぐことが可能であるため、熱中症予防に係る注意喚起が重要」とあります。

 そういった状況において、学校で熱中症への対処をしていくのは必須のことでしょう。登下校時に熱中症予防のための対応をするよう促していくことも必要です。たとえば、日傘をさすことことや水分の補給をきちんとすることなどです。以前であれば、子供が日傘をさすことなどはあまり一般的ではありませんでした。ただ先ほども書いたように気温が高くなる傾向にあることなども関係し、今ではそういったことが一般的になってきています。

 熱中症と関連し、水着のことが話題になることがあります。水着の上に上着を着ることの是非についてです。以前、私が勤めていた小学校では、基本的には上着はダメで、着用する場合は「皮膚が弱い」などの医師の診断書を付けて許可申請を出す必要がありました。

社会の変化に柔軟に対応したい

 学校という組織は「揃える」ということの過度にエネルギーを使っている場合があります。これは、昭和のころの学校の名残だと私は感じています。そのころは高度経済成長の中、皆が揃っていること、乱れないことが社会から必要とされていました。良質な工場勤務者を育成するようなイメージです。

 「水着は紺色のスクール水着以外は着用不可で、上着は基本的に認めない」のようなものは、上で書いたような学校が過度に「揃える」ことを意識した名残だと感じます。今の学校は「個別最適な学び」を目指しています。そういった状況において、上で書いたようなものは対極のようなものです。

 熱中症の予防や皮膚への影響を考えたら、水着の上着の着用を認めていくのは当然の流れでしょう。たとえば、幼稚園や保育園では首の後ろの部分まで保護することのできる帽子を着用している園が多いです。紫外線の皮膚への影響を考慮してのことです。昔は日に焼けることは健康の証でした。しかし、今は日に焼けることは、皮膚病につながる可能性もあり、過度に紫外線を浴びることは避けるべきとされています。

 このように科学の進歩により、社会の常識のようなものは変わってきています。そういったものへの対応に学校は遅れがちな傾向があります。学校は変化をあまり好まない組織でもあります。そういったものが悪い形で出てしまうことがあります。学校は、社会の変化に敏感でありたいです。登下校の日傘も水着の上着も現在の社会状況を踏まえれば、普通のことです。社会での当たり前なことが学校でも当たり前に行われるようにしていきたいものです。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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