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3.11震災学習…コロナ5類移行で回復傾向も活動継続に不安

 コロナ5類への移行により東北における震災学習の活発化が期待される中、伝承団体の96%、伝承施設の71%が活動継続に「不安がある」と回答したことが、3.11メモリアルネットワークが実施したアンケート結果から明らかになった。

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震災学習プログラム・伝承施設の来訪者数の推移
  • 震災学習プログラム・伝承施設の来訪者数の推移
  • 伝承活動を継続するうえでの不安感(震災学習プログラムの実施団体の回答)
  • 伝承活動を継続するうえでの不安感(震災伝承施設の回答)
  • 伝承人材が活動を継続するために必要だと思うこと

 コロナ5類への移行により東北における震災学習の活発化が期待される中、伝承団体の96%、伝承施設の71%が活動継続に「不安がある」と回答したことが、3.11メモリアルネットワークが実施したアンケート結果から明らかになった。要因の1つには、伝承人材育成への強い問題意識がみられる。

 3.11メモリアルネットワークは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の伝承活動の現状と課題の共有、防災・減災活動の活性化を目的に、毎年調査を行っている。今回は「2022年東日本大震災伝承活動調査」第2弾として、2023年3月に岩手・宮城・福島の3県で震災学習プログラムを実施する24団体と、震災伝承施設を運営する21組織を対象にアンケート調査を実施。第1弾の受入人数調査に続く第2弾アンケート調査として実施し、結果を速報にまとめた。

 第1弾調査では、コロナ以降落ち込んでいた来訪者が2022年に大きく回復していることが判明。2021年の17万5,628人から約9万人増え、2022年の来訪者は26万5,381人となった。加えて、第2弾調査では、高校生以下の来訪者の地域別(県外/県内/市町村内)の内訳を質問。把握している9団体・5施設の回答によると、2019年には全体の12.5%だった高校生以下の割合が、2020年以降は20%台後半~30%台前半まで上昇。 2021年と2022年の高校生以下の地域別来訪者を比較すると、県内が746人減で微減となり、県外が9,029人増、市町村内が4,780人増となった。

 震災学習の来訪者が段階的な回復傾向にある一方、伝承活動を継続するうえで不安を感じているかとの問いには、24団体中23団体(96%)、21組織中15組織(71%)が「不安がある」(=「大いに不安がある」「多少不安がある」「不安がある」合計)と回答。コロナ禍で急速に不安感が高まった2020年、2021年調査と比較しても、2022年は「不安がある」と回答する団体・組織の割合が増加した。

 「不安感が高まった理由」を個別にヒアリングしたところ、「コロナがあけて、東北6県からの予約件数が減っている。コロナで激減した企業研修の回復が見込めない」「雇用が不安定な状況で、後継者育成ができない。若い人が担っていくためには、きちんと給料が出て生活できる必要がある」等の回答が寄せられた。

 不安感の大きな要因の1つとなっている「伝承人材育成」に対する問題意識としては、「高齢化する伝承人材の後継者がいない・少ない」「新たな伝承人材の参入がない・少ない」「職業としての伝承人材の地位(立場、収入)が確立していない」等の回答をする団体・組織が多かった。

 また、伝承人材が活動を継続するために必要だと思うことについては、「継続的な伝承活動の機会」がもっとも多く、ついで「伝承人材をサポートする人材、組織」「視察、研修、講座等の学習機会」「職業としての伝承人材の地位(立場、収入)確立」「伝承の先輩・仲間との交流、サポート」「本人の継続的な学習、スキルアップの意思」に意見が集まった。

 アンケート結果は、3.11メモリアルネットワークのWebサイトで詳しく紹介。新型コロナウイルス感染症の5類移行により遠方へも移動しやすくなり、南海トラフ地震等の大災害が想定される中、命を守るために震災学習が活発に行われる東北被災地に関心をもってもらいたいとしている。

《畑山望》

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